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政治

安倍とパチンコ業界の「蜜月」

カジノ実現は「利益誘導」

2013年9月号公開

「カジノにはメリットがある。研究していきたい」

 三月に行われた衆議院予算委員会で、安倍晋三首相はこう答弁した。「カジノ特区」は、過去に繰り返し浮上しては消えてきた永田町のゾンビのようなプランだった。しかし現在、その実現に着実に近づいている。

「今秋以降、安倍首相は成長戦略の中にカジノを織り交ぜる」

 自民党の衆議院議員の一人はこう断言する。経済振興効果には疑問符がつけられているカジノに、安倍首相がこだわるのには理由がある。パチンコ業界との「蜜月」だという。この議員が続ける。

「安倍首相こそパチンコ議員の最右翼だ」

 ご存じの通り、パチンコ業界はカジノ実現に向けて政界に働きかけを行ってきた。パチンコ店はもちろん、パチンコ・パチスロ台メーカーや関連部品メーカーからなる業界は巨大である。十九兆六百六十億円の市場規模(『レジャー白書二〇一三』)を持つとされる「ギャンブル業界」の工作は露骨だ。

地元パチンコ店との繋がり

 パチンコ業界の団体はいくつも存在するが、主に店が加盟するパチンコ・チェーンストア協会(PCSA)という団体がある。業界の「信用と地位の向上を果たす」という目的を掲げるPCSAには、多くの国会議員が「政治分野アドバイザー」として名を連ねる。政権交代前には民主党二十人、自民党十一人だった人数構成は、がらりと様変わりして最新の名簿では、鳩山邦夫氏、野田聖子氏などをはじめとして、二十二人の自民党議員が並んでいる。

 PCSAアドバイザーをざっと眺めると他のパチンコ関係議連に所属する者がいるが、中でも注目すべきは「IR議連」と併任している議員だろう。

 IR議連の正式名称は「国際観光産業振興議員連盟」。永田町では「カジノ議連」の通称の方が、通りがいい。設立当初からの所属議員が「カジノとパチンコを並列で議論する」「パチンコ換金合法化はカジノ法案成立時以外にタイミングはない」といった発言をしていた。つまり、IR議連はパチンコ議連の別働隊である。同議連の設立は一〇年四月、民主党政権下で超党派七十四人の議員が集まった。安倍首相はこの議連の最高顧問を務めているのだ。
「安倍首相は、警察出身議員を押しのけ、いまや業界の窓口になったうえ、特定メーカーと接近している」

 業界関係者の一人はこう語る。従来、パチンコ業界の利益代弁者であったのは、自民党の平沢勝栄議員や、みどりの風の亀井静香議員といった元警察キャリアだ。

 警察庁の保安課長時代に、パチンコ業界における警察一家の一大利権であるプリペイドカードを導入した平沢氏は、長らく業界とのパイプ役であった。しかし、一度下野したうえ、与党に復帰した後も冷や飯を食う平沢氏では、パチンコ業界の要求するパイプ役を果たすことはできない。一方の亀井氏は特に業界大手のユニバーサルエンターテインメント(UE)社と近く、同社の会合には必ずと言っていいほど主賓として招かれていた。「亀井氏はメーカー社長をタクシー代わりに電話一本で呼び出す」(前出業界関係者)など、往時の影響力は大きかった。しかし、亀井氏もまた凋落の一途だ。

 そこで、業界大手のセガサミーホールディングスの里見治会長が政権交代前から近づいたのが安倍首相だ。同社は宮崎県のシーガイアを購入し、韓国のカジノリゾートに参画するなど、UE社と並んでカジノ実現に積極的である。

 セガサミー関係者の一人は語る。

「安倍首相は、里見会長の元に直接訪ねてくるほどの間柄」

 下野して支持基盤が脆弱になる中で援助者を求める安倍氏と、政界へのパイプがほしかった里見会長の思惑が重なったのだとこの関係者は分析する。政権交代後も、里見会長と安倍首相は複数回の会合を持ったほか、パチンコを所管する国家公安委員長にも接近しているという。

 いまや、セガサミー社員は業界団体の集まりで「安倍首相はウチが落とした」と公言してはばからない。

「参院選前に、里見会長は安倍首相に五千万円を手渡した」

 里見会長の側近の一人が、こんな耳を疑うような話を吹聴しているほどに、セガサミーは「お祭り状態」(前出業界関係者)なのだ。

 メーカーとの関係が深まったのは最近のことだが、実は安倍首相と業界の繋がりは昨日今日始まったものではない。安倍首相の地元である関門海峡を望む、山口県下関市。九州へ渡る本州側の玄関口であるこの地は、関釜フェリーを通じて長年韓国との玄関口という顔も持ち、コリアンタウンが存在する。地元紙記者が語る。

「安倍首相の祖父である岸信介元首相は韓国利権で知られた人物。安倍氏も地元在日社会との繋がりが深い」

 特に安倍首相の父である、晋太郎氏の時代からは地元パチンコ店から物心両面の支援を受けているという。過去には、山口県でパチンコ店を経営する東洋エンタープライズの保有物件に安倍首相の事務所があった。同社は、福岡に本社を置く七洋物産の一〇〇%子会社で、同社の先代社長である吉本省治氏は韓国から帰化した在日社会の大物だ。年商二百八十億円(一二年十二月期)の七洋物産は「一貫して安倍家の重要なスポンサーを務めてきた」(在福岡ジャーナリスト)という。

換金合法化で莫大な利益

 カジノが実現した場合に恩恵を受けるのは、その運営に参入しようとしているセガサミーのようなメーカーだけではない。前述した通り、カジノ議連は同時にパチンコの換金合法化を画策している。

 誰が見ても「賭博」であるパチンコは、景品買取業者を介在させる「三店方式」によって辛うじて摘発を免れているが、このグレーゾーンによって、これまでパチンコ店は株式の上場を阻まれてきた。つまり、カジノ実現とともに換金が合法化されれば「優良企業」であるパチンコ店の株式上場が可能になり、その上場益は桁違いだ。業界を挙げてカジノ実現に邁進する理由がよくわかるだろう。

 パチンコが警察の利権であることは前述した通りだ。仮にカジノが実現し、換金が合法化されてもパチンコ台の認可や暴力団排除などはこれまで通り続くため、警察の利権構造は揺るがない。

 安倍政権下では、観光立国推進閣僚会議の観光立国推進ワーキングチームが中間報告を発表したほか、「特定複合観光施設区域整備法案」通称カジノ業法案の提出が準備されるなど着々と事態は進行している。「観光立国」「経済振興」でカモフラージュするなかで、安倍首相とパチンコ業界の高笑いが聞こえそうだ。


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