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政治

史上最多「期日前投票」何がめでたい

世にも異様な日本の選挙制度

2017年11月号

 投票や選挙の結果が正当性を持つための条件が、二つある。投票や選挙を行うことへの利害関係者の合意と、選択に資する情報が十分に得られる環境だ。総理大臣・安倍晋三が仕掛けた第四十八回衆議院議員選挙は、野党第一党が事実上解党して臨む前代未聞の選挙であっただけでなく、二つの条件をいずれも欠き、選挙の正当性を高める狙いで導入された期日前投票の定着が逆に正当性を損ねる実態が浮き彫りになるなど、制度面の矛盾が露呈した選挙でもあった。
 第一条件の欠落だけなら、世界にも多くの例がある。最近、イラクのクルド人自治区やスペインのカタルーニャ自治州で行われた独立を問う住民投票は、中央政府や周辺国のみならず、欧米の民主主義国の制止を振り切って強行され、内外に大混乱を引き起こした。昨年、欧州連合(EU)離脱の是非を巡って行われた英国の国民投票も、合法とはいえ、時の政権の党利党略の側面が大きかった。
 一つの条件が欠けただけでこれだけ悪影響があるのだから、二条件とも満たさない事例など、独裁国家ならともかく、民主主義国ではないと見られていたが、安倍は、その「常識」を覆した。

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