「出版危機」それぞれの事情
日本のメディアを取り巻く状況は、昨今、完全に閉塞状態に陥っていると言ってよいでしょう。テレビ、新聞、出版とどこを見回しても明るい話題が見当たらないのが、何よりの証左です。特に小誌が身を置く雑誌界では昨年来、休刊、廃刊が相次いでおり、その波が週刊誌にまで波及しかねない勢いです。これについての最新の動向は、10月号114頁の「マスコミ業界話」で触れたとおりです。
こうした出版界の危機の原因を広告不況や、インターネットの普及などに求める向きもおられるでしょう。たしかに外的要因のひとつとして、無視はできません。しかし、雑誌が売れるか売れないかは、つまるところ「面白いかどうか」という一事に集約されるのではないでしょうか。小誌がこれからも存続できるかどうかは、ひとえに読むに値するかどうか、この一点にかかっていると心しておるところです。
外部に要因を求めることは簡単ですが、しかしその前に、まず基本に立ち返ることが重要です。幸い日本では「表現の自由」が保障されていますので、その「自由」のなかで最大限の努力を重ねていくことが、雑誌編集に求められています。
これに対して、「表現の自由」の保障されていない隣国、中国のメディア界では、ずいぶんと事情が異なるようです。新たな動きにつきまして、10月号20ページ下部「ミニ情報」で短く紹介しましたが、以下にその全文を掲載します。
中国で非時事系刊行物民営化の動き
中国は二〇一一年までに、ニュース・評論など時事的なものを扱う以外の全ての刊行物を完全に民営移管する方針を明らかにした。また、このメディア改革の本気度を示すかのように、中央レベルの政府系メディア一社が倒産することが明らかになり、波紋を呼んでいる。
中国で出版事業の管理を行う新聞出版総署が明らかにした。それによると、二〇〇八年に中国国内で発行された定期刊行物は九千五百四十九種類、新聞は千九百四十三種類だったが、このうちのかなりの部分を占める非時事系のものから民営移管を進めていく考えで、「正当な市場競争により淘汰されるのもやむなし」(同総署)としている。
ただし当面は公益性の高い図書や出版物は民営移管対象から除くとしているが、同時に徐々にニュースや評論などを扱う時事系の新聞・定期刊行物も民営移管の対象にしていく方針を言明した。中国国内のイデオロギー生産の多くを担ってきたこれら時事系の新聞・定期刊行物が、時期はいつであれ、民営移管されていく可能性については、これまでは疑問が呈されてきたが、その改革の本気度を示す事態がこのほど明らかになったかたちだ。
この動きに呼応するように、政府系の中央メディアに分類されてきた新聞「中華新聞報」が倒産した。人民日報のような古参の新聞と違い同紙は創業が一九九三年と比較的新しいが、共産党中央宣伝部から「内部参考」(党・政府関係者など一部の人間しか参照できないもの)級に指定されてきた新聞で、主に新聞業界内部の動態を扱ってきた。ただこの数年業績が悪化、8月末に「経営不振」を理由に停刊、倒産した。従来までこうした中央レベルの媒体は、いかに業績不振であろうと党が資金援助し延命してきただけに、今回の場合の倒産とは、党が事実上見限ったことを意味する。さらに上述の今後のメディア改革に向けての本気度を対外的に示すものとして受け止められている。
このように限定的ながら民営移管が顕在化し始めている中国のメディア改革だが、注目されるのは、その対象が時事系の刊行物にまで広がった場合だ。端的に言えば、完全市場経済のもとではこれまでのようなイデオロギー産出体制は難しくなることが予想されるため、今後の動静が注目される。
選択編集部
















