巻頭インタビュー

日本人に政治「劣化」への危機感がないイェスパー コール(タンタロン リサーチ ジャパン代表取締役)
2009年9月号 連載〈巻頭インタビュー〉

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 ---なぜ日本の政治は、ここまで劣化してしまったのでしょうか?

 イェスパー 政治が場当たり的になってしまった。選挙に勝つことばかりで、誰も理想や国家ビジョンを示さない。
 自民党の政治は、家柄のよい二世三世たちがエスカレーター式に出世する、ワンパターンの「お坊ちゃん政治」。誰ひとり、オバマのような魅力はない。
 国民は毎日、自己責任を果たしている。でも政治はどうか? 「お坊ちゃん」だから、責任をとらない。ガッツもない。財政や税制がおかしいから何もできないと言うばかりの「言い訳政治」だ。「あなたの夢を実現できる」と言うのが本当の政治家なのに、「できない」ばかりを言う「無責任政治」になってしまった。

 ---かつて責任政治はあった?

 イェスパー 中曽根さんとか小泉さんは、欧米型の政治家に近かった。政策や個別の問題で、自分で判断し決定できる人がいたけど、でも自民党は世代交代に失敗してしまった。
 高成長の時に責任政治はそんなに大事ではなかった。名目経済成長率が四?五%伸びてパイ全体が拡大すると、勝ち組も負け組も皆ハッピーになる。だから問題も先送りできた。でも今はゼロ成長。経済の成長が止まったことで問題が表面化した。
 今、日本には「どうでもいい」という雰囲気が漂っている。日本人は、「神風主義」。待って我慢していれば、いつか神風が吹くと信じる。それまで全て、他人まかせ。政治もそうなってしまった。神風を待っている間に、自民党は静かに死んでいった。

 ---政治だけの責任でしょうか?

 イェスパー 財界にも責任がある。財界はこの二十年間、自分の会社のことばかり考えて、国家戦略を全然描いてこなかった。政治と金の問題というけど、政治は金がかかる「サーカス」。米国でもドイツでも中国でも、政治はショービジネスだ。だから財界人が、この国を正しく導く政治家を選びだして、その人のパトロンとなり、国家戦略を前に進める助っ人となる。財界と政治が両輪となって機能しなくなったから、政治は劣化してしまった。
 一九八六年に僕が来日したとき、経団連会長というと、まさに「財界総理」の風格があった。自分の業界、会社を超えて国の未来について考えていた。今はただのつまらない圧力団体みたい。

 ---政財界の関係がうまく機能してないと感じますか?

 イェスパー 外国人の眼からみれば、そのあたり、自民党政治は完全にアマチュアだった。政治と経済が一枚岩になれば、日本は外交でものすごく強くなれたのに、実際はバラバラ。だって、総理が外国に行く時、財界の人は同行しない。世界の常識では考えられない。政治のリーダーシップがないからだ。

 ---政権交代が現実となりますが。

 イェスパー 民主党は非常に強くなる。でも、それで何がしたい? 日本にはどうしても成長戦略が必要だが、政治がそれを描けるか。中国、韓国との通貨圏構想とか、「エアバス」みたいな多国間プロジェクトを提唱するとか、世界から一目置かれる戦略を打ち出せばいい。民主党になっても無責任な「お坊ちゃん政治」を続けるなら、世界は日本を見放すだろう。相手にしても時間の無駄と思われる。
 政治は社会を映す鏡。だから、政治の劣化は、社会の劣化でもある。日本人には危機感が足らない。

〈インタビュアー 編集部〉


日本人に政治「劣化」への危機感がない
イェスパー コール(タンタロン リサーチ ジャパン代表取締役)

1961年ドイツ生まれ。86年ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院で修士取得後、来日。東京大学教養学部社会科学研究室研究員を経て、J.P.モルガン東京調査部長、メリルリンチ日本証券チーフエコノミストを歴任。2007年より現職。

 

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