不況後の日本に思い致せ小島 明
2009年1月号 連載〈巻頭インタビュー〉
---今回の不況は本物の世界恐慌につながるのでしょうか。
小島 それはありませんね。一九三〇年代の大恐慌の際は、世界経済の完全な底抜けだった。失業率はどの工業国も二〇?三〇%までになり、世界貿易は五年間で四分の一になった。現在はまがりなりにもセーフティネットができている。保護主義を阻む国際ルールや、昨年十一月にワシントンで開かれたG20サミットのような仕組みです。
---それにしても、過去の不況と随分光景が違います。
小島 世界同時不況だからです。引っ張り上げてくれる国がない。現代は輸出依存経済体制なのに、どの国も買い渋って互いに足を引っ張っている。オイル・ファンドもソブリン・ファンドもカネを貸し付けるのではなく、引き揚げることに汲々としている。寒々しい光景となるのは当然のことです。
---その中でも、日本は?
小島 サブプライムの不良債権について日本は別天地でした。不動産バブルで懲り、リスクに敏感だった。一種のケガの功名です。それで円の為替相場は異常なほど上がった。日本は典型的な輸出経済国だから、トヨタまで震え上がった。同時に外国のファンド、日本の場合は米国のファンドが大部分ですが、それがウォール街で大損して現金不足に陥り、日本で投資していた株やマンションの換金売り急ぎに走った。結果はご覧の通りの株価です。日本の内需脆弱体質がモロに表れた。
---米国や欧州に比べてマシですか。
小島 こんなに不景気感が強まっても、日本の銀行の融資は伸びています。また自己資本比率は一一%前後で、国際水準の八%よりかなり高い。特に大手金融機関はゆとりがある。三菱UFJや野村は、数千億円規模で破綻した米国金融機関の有望部門を傘下に収める勇気を持っていた。入手した人材や金融ノウハウをどう活かしていくか、真価を問われるのはこれからですが。
---今後の日本が考えるべき課題は何なのでしょう。
小島 日本はリスクに挑戦しない。伝統的な預金経済で、預金する側も運用する金融機関も、リスクをしっかり評価するより、リスク回避第一主義だ。対極が、マイクロソフトのケースです。創業者ビル・ゲイツが持っていた担保は彼の頭、才能だけだった。それをリスクがあっても優良なリスクだと判断した投資家たちがいた。新しいアイデアに賭ける投資マネーが必要です。
---トンネルの闇はいつまで。
小島 いつトンネルを抜けるかも大事ですが、トンネル後の日本はどんな世界であるかを考えるべきです。戦後の日本は、十四回の不況期があった。不況が日本経済を前進させた例は多い。ポスト東京五輪不況期の公害防止技術、石油ショック沈滞期後のエネルギー高効率化技術......どちらも世界をリードし、経済を活気づかせ、国民に勇気を与えた。私は現在の不況の後には「本物の文化」が売れる時代だと予測します。贅沢でなくとも質の高い商品です。
---今後デフレになるのでしょうか。
小島 米国の盛んな消費によって隠されていた日本国内のデフレ傾向が表面化するでしょう。しかし日本にはまだカネがある。一番深刻な問題は、若い世代が国の将来に希望を持てないことです。若年失業も多すぎる。もっと良い国になり得る、という希望を持ってもらわねば。志やモラル、夢のデフレから脱するのが最優先事です。
小島 それはありませんね。一九三〇年代の大恐慌の際は、世界経済の完全な底抜けだった。失業率はどの工業国も二〇?三〇%までになり、世界貿易は五年間で四分の一になった。現在はまがりなりにもセーフティネットができている。保護主義を阻む国際ルールや、昨年十一月にワシントンで開かれたG20サミットのような仕組みです。
---それにしても、過去の不況と随分光景が違います。
小島 世界同時不況だからです。引っ張り上げてくれる国がない。現代は輸出依存経済体制なのに、どの国も買い渋って互いに足を引っ張っている。オイル・ファンドもソブリン・ファンドもカネを貸し付けるのではなく、引き揚げることに汲々としている。寒々しい光景となるのは当然のことです。
---その中でも、日本は?
小島 サブプライムの不良債権について日本は別天地でした。不動産バブルで懲り、リスクに敏感だった。一種のケガの功名です。それで円の為替相場は異常なほど上がった。日本は典型的な輸出経済国だから、トヨタまで震え上がった。同時に外国のファンド、日本の場合は米国のファンドが大部分ですが、それがウォール街で大損して現金不足に陥り、日本で投資していた株やマンションの換金売り急ぎに走った。結果はご覧の通りの株価です。日本の内需脆弱体質がモロに表れた。
---米国や欧州に比べてマシですか。
小島 こんなに不景気感が強まっても、日本の銀行の融資は伸びています。また自己資本比率は一一%前後で、国際水準の八%よりかなり高い。特に大手金融機関はゆとりがある。三菱UFJや野村は、数千億円規模で破綻した米国金融機関の有望部門を傘下に収める勇気を持っていた。入手した人材や金融ノウハウをどう活かしていくか、真価を問われるのはこれからですが。
---今後の日本が考えるべき課題は何なのでしょう。
小島 日本はリスクに挑戦しない。伝統的な預金経済で、預金する側も運用する金融機関も、リスクをしっかり評価するより、リスク回避第一主義だ。対極が、マイクロソフトのケースです。創業者ビル・ゲイツが持っていた担保は彼の頭、才能だけだった。それをリスクがあっても優良なリスクだと判断した投資家たちがいた。新しいアイデアに賭ける投資マネーが必要です。
---トンネルの闇はいつまで。
小島 いつトンネルを抜けるかも大事ですが、トンネル後の日本はどんな世界であるかを考えるべきです。戦後の日本は、十四回の不況期があった。不況が日本経済を前進させた例は多い。ポスト東京五輪不況期の公害防止技術、石油ショック沈滞期後のエネルギー高効率化技術......どちらも世界をリードし、経済を活気づかせ、国民に勇気を与えた。私は現在の不況の後には「本物の文化」が売れる時代だと予測します。贅沢でなくとも質の高い商品です。
---今後デフレになるのでしょうか。
小島 米国の盛んな消費によって隠されていた日本国内のデフレ傾向が表面化するでしょう。しかし日本にはまだカネがある。一番深刻な問題は、若い世代が国の将来に希望を持てないことです。若年失業も多すぎる。もっと良い国になり得る、という希望を持ってもらわねば。志やモラル、夢のデフレから脱するのが最優先事です。
〈インタビュアー 本誌・伊藤光彦〉

















