巻頭インタビュー

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アメリカの「激しい変化」に備えよ本間 長世
2008年12月号 連載〈巻頭インタビュー〉

 ---世界規模の金融危機発生とバラク・オバマの米国大統領当選が同時であったことを、どう考えますか。

 本間 オバマが大統領選のキーワードを「チェインジ」と決めた時、世界経済がこんな状況になるとは恐らく予測しなかったでしょうが、まさにすべてを変えなければならない時だと人々が悟った瞬間と投票日が一致したのですね。米国選挙民の立場では、緊急を要する経済再生で頼れるのはオバマだとの判断が雪崩を打って増大した。特に、生活危機意識の強い女性票が敏感な反応を示した。

 ---七十余年前の大恐慌の最中、ルーズベルトは「ニューディール」(新規まき直し)を叫んで民主党の大統領候補となった。状況が似ていますね。

 本間 さらにルーズベルトは就任演説で「恐れるべき唯一のことは恐れること自体である」と言った。オバマの「我々にはできるのだ」に通じる。指導者の大きな役割は人々の考え方の方向を変えることです。雄弁、つまりことばの力は事態そのものを動かすという歴史上の例です。

 ---それにしても、オバマ新大統領が直面する問題は恐ろしい。

 本間 「選挙に勝つこと」と「勝ってからどうするか」は違う。ルーズベルトは就任最初の百日間で、恐慌下の国民、企業を救済する法案を矢継ぎ早に議会へ送り、大統領主導で成立させた。ニューディールという経済への国家介入は明らかに成功した。オバマ政権もファースト・サクセスを必要とします。米国の政治史をみれば、危機下の大統領ほど成功のチャンスを得た。オバマは経済危機の克服を米国の新たな戦いとみなしているのではないか。政治家としては活用すべき危機がそこにある。

 ---米国経済には蘇生の力があり、オバマ政治はそれを引き出す能力を持つということでしょうか。

 本間 国民はすぐ効果を出してほしいでしょう。ノーベル賞経済学者のクルーグマンは「もはや金融政策は無効だ。財政出動でカネをジャブジャブ出すことだ」という主旨のことを言っていますね。アフリカ人を父に持つ人物が大統領に上りつめたのは、米国が「born again」(再生)という力を持ち続けている証左です。オバマは「多様なものから成る一つのアメリカ」を身をもって具現した。米国は新しいエネルギーを得たと思う。

 ---外交では何が変わるでしょう。

 本間 国際協調の基本路線を強めるでしょうが、米国はいつ変わるかわからない。第一次大戦時、ウィルソン大統領は「米国は戦争に加わらずに済んだ」(He kept us out of war.)とのスローガンを大宣伝させて一九一六年の再選を果たしたが、ドイツ軍Uボートによる無差別攻撃が始まるや参戦を決意した。一九四一年段階でルーズベルトは、演説でヒトラーに百五十回言及したが、日本に触れたのは四回だけ。同じ年の選挙で「米国民を戦場には送らない」と公約して勝ったが、翌年から大変貌をためらわなかった。米国のそういう本性が消えるとは考えない方が安全です。

 ---米国の経済再生が思うにまかせなかった時が心配ですね。

 本間 国民感情を盛り上げ、興奮させるのに雄弁術は大きな役割を果たす。人の心を動かすには理性より情動がモノを言う。オバマの言葉を注意深く見守ることが必要です。

〈インタビュアー 本誌・伊藤光彦〉


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