世界デフレを防ぐ処方は竹森 俊平
2008年11月号 連載〈巻頭インタビュー〉
---これからの世界経済がどうなるか。竹森さんは「二つのシナリオ」を持っていらっしゃるそうですが。
竹森 中国などの新興国やオイルマネーをため込んだ産油国から、あり余るドルが米国に還流し、ウォールストリートはそれをサブプライム・ローンに注ぎ込んだ。つまり世界的なカネ余りを米国の住宅投資で吸収していた。だがサブプライムの信頼性が崩れるや、それに投資をした金融機関が危なくなり、世界的金融危機となった。投資需要の回復には、サブプライムの代わりの、別の有望な投資先が現れる必要がある。可能性は少ないがそれが現れるというのが、第一のシナリオです。
---どこもかしこも金回りが悪くなる。世界的にひどい低成長が避けられませんね。
竹森 その通りです。第二のシナリオとはまさに、有望な投資先がなくなるために、成長の源泉である投資が減少し、世界全体の成長率が下がるというわけです。この危機で金融機関もリスクに敏感になるし、規制も強化される。それは必要でもある。しかし、それは金融危機が収まってからの話で、十一月十五日にワシントンで予定されるG8プラス十数カ国の緊急金融問題サミットでも、先行きのことより、どうやって危機を収拾するかが主要な議題になるでしょう。
---低成長というと、どのくらいの率を予想しますか。
竹森 日本の成長率は一%前半でしょう。中国では七%が目安になる。これは長期的な話です。そんなに成長率が下がって深刻になるのは、各国の財政です。高成長のもとでの財政収入を見込んで、歳出で大盤振る舞いをしているからです。
---米国ではブッシュ政権の末期だったことが対策を遅らせたのでは。
竹森 今年三月のベアー・スターンズ経営危機のさいには速やかな救済措置を講じた米政府が、九月のリーマン・ブラザーズ破綻ではさっさと見捨てた。この変節は理解できない。リーマンの危機が全世界規模の混乱の引き金になったことは間違いないのだから。もっともそれにより、欧州からの危機への積極的な対応が生まれましたが。
---フランスのサルコジ大統領がEU(欧州連合)の現議長として頑張りましたね。危機サミット開催をブッシュに受け入れさせました。
竹森 私はブラウン英首相のリーダーシップを評価します。ロンドンに英国経済の心臓部であるシティ(金融センター)を持っているから行動にためらいがなかった。破綻行救済、預金保護のモデル・レジームをいち早く打ち出し、これがEUの政策ともなった。世界的な危機の対処では、「先に立つ」人や国を必要とします。そのコアの担い手が欧州に移ったかもしれない。
---竹森さんの予言される世界デフレの行き先が見えてくるのはいつ頃でしょうか。そしてどのようにして。
竹森 デフレになったら大変です。そうならないように、各国とも思い切った財政・金融刺激策を取るでしょう。それでも景気後退が起こることは致し方ない。景気回復の端緒まで最短二年間はかかると思う。長期でも、これまでのような世界的な高成長を持続できるかは疑わしいが、省エネ、代替エネルギー技術を梃子とした新しい投資分野が誕生することに望みがつなげる。これは日本の得意な分野でもあるので、日本企業の積極的行動が鍵です。
竹森 中国などの新興国やオイルマネーをため込んだ産油国から、あり余るドルが米国に還流し、ウォールストリートはそれをサブプライム・ローンに注ぎ込んだ。つまり世界的なカネ余りを米国の住宅投資で吸収していた。だがサブプライムの信頼性が崩れるや、それに投資をした金融機関が危なくなり、世界的金融危機となった。投資需要の回復には、サブプライムの代わりの、別の有望な投資先が現れる必要がある。可能性は少ないがそれが現れるというのが、第一のシナリオです。
---どこもかしこも金回りが悪くなる。世界的にひどい低成長が避けられませんね。
竹森 その通りです。第二のシナリオとはまさに、有望な投資先がなくなるために、成長の源泉である投資が減少し、世界全体の成長率が下がるというわけです。この危機で金融機関もリスクに敏感になるし、規制も強化される。それは必要でもある。しかし、それは金融危機が収まってからの話で、十一月十五日にワシントンで予定されるG8プラス十数カ国の緊急金融問題サミットでも、先行きのことより、どうやって危機を収拾するかが主要な議題になるでしょう。
---低成長というと、どのくらいの率を予想しますか。
竹森 日本の成長率は一%前半でしょう。中国では七%が目安になる。これは長期的な話です。そんなに成長率が下がって深刻になるのは、各国の財政です。高成長のもとでの財政収入を見込んで、歳出で大盤振る舞いをしているからです。
---米国ではブッシュ政権の末期だったことが対策を遅らせたのでは。
竹森 今年三月のベアー・スターンズ経営危機のさいには速やかな救済措置を講じた米政府が、九月のリーマン・ブラザーズ破綻ではさっさと見捨てた。この変節は理解できない。リーマンの危機が全世界規模の混乱の引き金になったことは間違いないのだから。もっともそれにより、欧州からの危機への積極的な対応が生まれましたが。
---フランスのサルコジ大統領がEU(欧州連合)の現議長として頑張りましたね。危機サミット開催をブッシュに受け入れさせました。
竹森 私はブラウン英首相のリーダーシップを評価します。ロンドンに英国経済の心臓部であるシティ(金融センター)を持っているから行動にためらいがなかった。破綻行救済、預金保護のモデル・レジームをいち早く打ち出し、これがEUの政策ともなった。世界的な危機の対処では、「先に立つ」人や国を必要とします。そのコアの担い手が欧州に移ったかもしれない。
---竹森さんの予言される世界デフレの行き先が見えてくるのはいつ頃でしょうか。そしてどのようにして。
竹森 デフレになったら大変です。そうならないように、各国とも思い切った財政・金融刺激策を取るでしょう。それでも景気後退が起こることは致し方ない。景気回復の端緒まで最短二年間はかかると思う。長期でも、これまでのような世界的な高成長を持続できるかは疑わしいが、省エネ、代替エネルギー技術を梃子とした新しい投資分野が誕生することに望みがつなげる。これは日本の得意な分野でもあるので、日本企業の積極的行動が鍵です。
〈インタビュアー 本誌・伊藤光彦〉

















