なめられた国家は危ない岩見 隆夫(政治ジャーナリスト)
2008年10月号 連載〈巻頭インタビュー〉
---政権投げ出しが一年間に二度、さて総選挙......国民がこれほど政治に愛想をつかしたことはないでしょう。
岩見 総理大臣の職場放棄だよ。こんなことはあり得ない、あってはならぬことだ。安倍晋三氏は本物の病気だったから、まあ仕方ないとしても。福田康夫前総理の場合は、闘わずして逃げ出してしまった。見たこともないような政治の溶解現象です。
---しかし、辞めざるを得ないという事情はあったのでしょうね。
岩見 直接的には、公明党に政府・自民党の生命維持装置を外されかけたことでしょう。一つは選挙支援、これがなければ勝てない自民党議員はかなりいる。いま一つは「三分の二」カードだな。衆議院で重要法案も再可決できなかったら、政権は立往生となる。次には、森喜朗氏に引導を渡されたことだろう。八月十七日のテレビで「無味乾燥の福田。次は麻生だ」と言われてしまった。福田の下では総選挙で勝てない、ということが自民党の認識となった。
---首相は最高権力者でしょう。国政の課題が山積する中、血みどろになっても職務を全うすべきだったのでは。
岩見 そこで踏ん張って、初めて指導者だと言える。多勢に無勢でも統治者としての大目標に突進してほしかった。まあ、薄味の政治家だから。総理の適格性がなかったということです。
---国際的には福田さんは今年、G8の議長だったのに、グルジアで戦火が起こっても動こうとしなかった。
岩見 ブッシュ(米大統領)やメルケル(ドイツ首相)に電話して、ロシアを除くG7の苦言をモスクワに伝える......そういう気概はないな。我が家の片づけで手一杯です。
---なぜ日本政治がこんなに痩せこけてしまったのでしょう。
岩見 政治家の世襲制が、一番罪が重い。平成以降の総理大臣が十三人で、うち九人が政治家二世、三世です。その前は岸、池田、田中、三木、福田、中曾根......一人もいない。二世、三世政治家の特徴は坊ちゃんだということ。こらえ性がない。自分が新しい政治を創り出すのだという覇気がない。小泉純一郎氏だけはキャラクター人気で長持ちしたが、彼も粘りけはなかったな。
---政治家としての訓練が足りない。
岩見 昔は派閥のボスたちがマンツーマンで徹底的に教育した。ポストもカネも与えて。派閥の消長にかかわるから教える側も本気だった。総理大臣ともなれば、たとえ火の中、水の中、と覚悟した忠誠心強い有能な側近がいたものです。総理大臣はずっと怖かった。今では官僚のほうが威張っている。
---自民も民主も官僚制度改革の声は大きいですが。
岩見 官僚亡国論がこれだけ声高になっても、官僚たちは平気です。タカを括っている。自分たちは政治家より上だと思っているから。有力省庁の局長クラス以上はまったく政治家そのものですよ。官支配が日本の政治をダメにした最大の原因かもしれない。
---日本の政治機能喪失には諸外国もあきれているようです。
岩見 いや、もうこの国はなめられている。いいですか、なめられ始めた国家は危ないのですよ。米国だっていつまで核の傘をさしてくれるか。今回の総選挙で安定政権のできる可能性はない。政界の大再編をやるしかない。そうなっても、この国の危うさを直視する政治への道は、遥かだろうな。
岩見 総理大臣の職場放棄だよ。こんなことはあり得ない、あってはならぬことだ。安倍晋三氏は本物の病気だったから、まあ仕方ないとしても。福田康夫前総理の場合は、闘わずして逃げ出してしまった。見たこともないような政治の溶解現象です。
---しかし、辞めざるを得ないという事情はあったのでしょうね。
岩見 直接的には、公明党に政府・自民党の生命維持装置を外されかけたことでしょう。一つは選挙支援、これがなければ勝てない自民党議員はかなりいる。いま一つは「三分の二」カードだな。衆議院で重要法案も再可決できなかったら、政権は立往生となる。次には、森喜朗氏に引導を渡されたことだろう。八月十七日のテレビで「無味乾燥の福田。次は麻生だ」と言われてしまった。福田の下では総選挙で勝てない、ということが自民党の認識となった。
---首相は最高権力者でしょう。国政の課題が山積する中、血みどろになっても職務を全うすべきだったのでは。
岩見 そこで踏ん張って、初めて指導者だと言える。多勢に無勢でも統治者としての大目標に突進してほしかった。まあ、薄味の政治家だから。総理の適格性がなかったということです。
---国際的には福田さんは今年、G8の議長だったのに、グルジアで戦火が起こっても動こうとしなかった。
岩見 ブッシュ(米大統領)やメルケル(ドイツ首相)に電話して、ロシアを除くG7の苦言をモスクワに伝える......そういう気概はないな。我が家の片づけで手一杯です。
---なぜ日本政治がこんなに痩せこけてしまったのでしょう。
岩見 政治家の世襲制が、一番罪が重い。平成以降の総理大臣が十三人で、うち九人が政治家二世、三世です。その前は岸、池田、田中、三木、福田、中曾根......一人もいない。二世、三世政治家の特徴は坊ちゃんだということ。こらえ性がない。自分が新しい政治を創り出すのだという覇気がない。小泉純一郎氏だけはキャラクター人気で長持ちしたが、彼も粘りけはなかったな。
---政治家としての訓練が足りない。
岩見 昔は派閥のボスたちがマンツーマンで徹底的に教育した。ポストもカネも与えて。派閥の消長にかかわるから教える側も本気だった。総理大臣ともなれば、たとえ火の中、水の中、と覚悟した忠誠心強い有能な側近がいたものです。総理大臣はずっと怖かった。今では官僚のほうが威張っている。
---自民も民主も官僚制度改革の声は大きいですが。
岩見 官僚亡国論がこれだけ声高になっても、官僚たちは平気です。タカを括っている。自分たちは政治家より上だと思っているから。有力省庁の局長クラス以上はまったく政治家そのものですよ。官支配が日本の政治をダメにした最大の原因かもしれない。
---日本の政治機能喪失には諸外国もあきれているようです。
岩見 いや、もうこの国はなめられている。いいですか、なめられ始めた国家は危ないのですよ。米国だっていつまで核の傘をさしてくれるか。今回の総選挙で安定政権のできる可能性はない。政界の大再編をやるしかない。そうなっても、この国の危うさを直視する政治への道は、遥かだろうな。
〈インタビュアー 本誌・伊藤光彦〉

















