巻頭インタビュー

米両政党の対日スタッフを研究せよ猪口 孝
2008年9月号 連載〈巻頭インタビュー〉

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 ---米国の大統領選はいよいよ政策論争に入りました。

 猪口 これからが正念場です。共和党も民主党も四年に一度、予備選挙を通して政党の活性化を図る。国民も政治家自身も政党への帰属意識を盛り上がらせました。オバマ氏がバイデン上院議員を副大統領候補に選び、政策と人事の季節がやってきます。

 ---では、まだ政策は白紙?

 猪口 候補者が公式に決まって、それからマニフェスト(政策目録)の選択時期となる。売り込み済みもあるし、飛び込みの売りもある。企業や消費者の団体、ウォールストリート、シンクタンクや学者たち、もちろん政治家も。無数の利害関係者がタマ(票)、カネ、クチをはさみ込む。そしてマケインとオバマの傘下にそれぞれのコアリッション(政策連合体)が生まれる。

 ---しかし、共和党、民主党で固有の政策バックボーンはあるでしょう。

 猪口 ブッシュ・ジュニアの共和党政権はネオコン主義に牛耳られたと言われるが、私の見るところ、ネオコンたちが本当に実権を握ったのは二〇〇三年のイラク開戦の前から半年間くらいだった。今では見る影もない。また、共和党でも民主党でも、その知恵袋的な人材が、ずっと同じ党を支持するとは限りません。共和も民主も局面ごとに政策の急転をためらわない。

 ---対日政策を見る限り、共和党のほうが日本重視の一貫性を持つというのが通説のようですが。

 猪口 米国は日本を重視していますよ。二大政党でその差はない。しかし、それは米国の世界軍事戦略のため。日本列島が要の位置に横たわる、という地理条件のためです。これは太平洋戦争後の日本占領期から変わらない。今、空母集団を倍増させると言っている。当然中国を睨んでのこと。米国にとって日本の重要性が落ちるはずがない。

 ---それは相対的には米中の軸が米日より太くなるということ?

 猪口 当たり前でしょうね。極東で米国が気を使うのは中国、北朝鮮、それからロシア、西にゆくとインド、パキスタン、イラン。核を持っていたり、持とうとしているからね。日本では早くMD(ミサイル防衛)網をつくりたい。そのために日本を一層堅く取り込むことに努めるでしょう。

 ---例えばレーガン時代には、もっと奥行きある同盟関係だったのでは。

 猪口 なるほど「ロン・ヤス」関係ですか。しかし、レーガノミックスの無茶苦茶な経済政策で、あの時期ほど日本が痛めつけられた時はない。クリントン時代には沖縄の米軍基地移転問題が浮上した。それから十年以上経っても普天間一つ解決していない。日本はそういう国かと向こうが考えてもムリはないというものでしょう。

 ---もしオバマ政権が誕生したら?

 猪口 彼がどんな人材を対日政策のポジションに据えるかに左右されるが、米国の経済は悪化の一途だから注文は厳しくなるでしょうね。それはマケイン政権でも似たようなもの。米国にとって、日本は思想がない、行動がない、ネットワーキングがない同盟国として映り始めた。英語を使った真の交渉力を持ち合わせていない国が日本。オバマあるいはマケインの周囲に群がる政策人材をうんと研究する、どんどん会って議論する。中国も韓国も死に物狂いでやっている基礎努力をさぼり続けたら、日米関係には深みも厚みも広がりも望みようがない。

〈インタビュアー 本誌・伊藤光彦〉


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