「小沢政治」の狙いは何か岩見隆夫(政治ジャーナリスト)
2009年12月号 連載〈巻頭インタビュー〉
岩見隆夫(政治ジャーナリスト)
1935年旧満州・大連生まれ。京都大学法学部卒業後、1958年毎日新聞社入社。論説委員、「サンデー毎日」編集長、編集局次長、編集委員室長などを歴任。2007年退社、現在は客員編集委員。新著『演説力』(原書房)など著書多数。
---鳩山政権は不安材料がありながらも支持率六〇%、次の参院選でも過半数をとる勢いですが。
岩見 民主党政権の将来を考えるということは、いわゆる「小沢一郎問題」をどの程度深刻に捉えるかということだ。今の民主党は日々小沢氏の「私党」になっている。それは彼の持つ性癖で、宿命的に避けられない。国会改革や陳情の幹事長一元化などを実施したが、彼はまだまだ政治の仕組みをいじくろうとしている。彼が目指す政治目標は、第一段階は「政権奪取」、これはすでに果たした。第二段階は「自民党つぶし」、今はこのプロセスに必死だ。そして第三の最終段階で「本格的な政界再編」を考えている。混ざりっ気のない、「純度の高い二大政党制」を作るのが狙いだ。今の雑居集団の政党では、憲法改正のような大きなテーマは処理できず、先送りするしかない。そういう国は、彼に言わせれば、「成熟した近代国家」「普通の国」ではないということになる。
---つまり夏の参院選後に政界大再編があるということですか。
岩見 小沢氏は来年夏の参院選で自民党を政権政党から追放し、単なる中型の政党に封じ込めたうえで、政界大再編に持ち込む腹だろう。高野山でのキリスト教批判を見てもわかるとおり、彼は選挙のためなら何でもやる。好意的に見れば「純度の高い二大政党制」は小沢氏の夢ということになるが、それが日本にとっては悪夢になる可能性もある。「純度の高い二大政党制」を民主的に実現しようとしてもなかなか難しく、それができる腕力は小沢氏にしかないのも事実だ。しかし、彼が動けば結局は強引な政治手法に対する反発を招く。そうした矛盾を抱える存在なのだ。「小沢民主党」の体質については、上意下達的、国家社会主義的だという批判はすでに自民党などからあがっている。しかし、マスコミは恭順の姿勢を示し始め、小沢氏批判が減っている。このままでは「恐怖政治」になりかねない。
---鳩山首相も小沢氏の傀儡との評です。両者の関係をどうみますか。
岩見 小沢氏は鳩山氏を御しやすいとみているだろう。しかし、その判断は間違うかもしれないと思っている。鳩山氏は小沢氏に対する媚態を見せながらも、政治生命をかけて腹をくくる場面があるに違いない。一国の首相が小沢氏との綱引きを強く意識しなければならないわけで、結局は民主党の命運もこの綱引きの行方にかかっているということだ。
---「純度の高い二大政党制」と民主的手法、国益上重要なのは。
岩見 小沢イズムに共感するところもあるが、やはり統治の手法は重要で、民主主義が危うくなる懸念がつきまとう。専制的な恐怖政治は絶対にダメだ。「純度の高い二大政党制」の実現は、所詮意思表示を明確にしない農耕民族に向かないのではないか。その無理筋を腕力で実行しようとする日本人離れした感覚を持つ小沢氏は、良くも悪くも戦後初めて現れた一種の革命家だ。日本の政治はそういう独裁的な権力者に振り回されている。小沢氏が策謀する限り、国家ビジョンを競う健全な二大政党制は期待できない。結局かつての自社さ連立政権誕生の経緯のように、「親小沢」と「反小沢」という矮小化した枠組みの再編に終わってしまうだろう。それは日本にとって大いなる不幸だ。

















