連載

認知症が危ぶまれる本に遇う(連載108) 河谷史夫(朝日新聞記者)

 阿呆面をして横浜は関内駅出口に立っていた。「五日午後二時」という約束である。しかし待ち人来らず。なかなか来ない。

 取材先を訪ねるとき十五分前に到着しておけとは、わたしどもの常識である。インタビューは初めて顔を合わせる他人との真剣勝負だ。であるからには、相手を待たせてあたふたと駆けつけるようでは、はなから負い目を持つはめになる。ただでさえ切っ先鈍いなまくら刀だから、せめて立ち合いの間く・・・
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