連載

破局の光に照らして本に遇う(連載120) 河谷史夫(朝日新聞記者)

 人間、どん底まで落ちないと、ほんとうのことは見えてこないものらしい。
 一九四五年八月、敗戦を栃木県佐野で迎えた司馬遼太郎が、「なぜこんなバカな戦争をする国にうまれたのか」と、ほぞをかむ思いをしたという話は有名である。

 司馬は陸軍戦車部隊の少尉であったが、いよいよ本土決戦で米軍が東京を衝いて来るとき迎撃せよとなった。当然のことに、逃げて来る同胞と部隊とは行き違う。道路という道路は・・・
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