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連載

新・不養生のすすめ 第25話

「透析中止」は悪ではない
大西 睦子

2019年4月号

 公立福生病院の医師が、腎不全の女性(当時四十四歳)の意思に基づき人工透析を中止し、一週間後に女性が死亡したことが問題になっている。同病院の医師は、「医師の独善」「医道を外れた、医師にあるまじき行為」「一連の行為は国のガイドラインから外れ、現在の医療水準や一般社会の認識からも懸け離れている」など、医療関係者をはじめ多くの人から非難を浴びている。
 日本のメディアは、この問題を英文ニュースに翻訳し世界にも発信した。それらの記事を米国人医師たちと共有すると、彼らは日米の医療倫理の違いに驚いた。米国では、透析を含めて、患者はいかなる治療も拒否する権利をもつため、福生病院の医師の行為に倫理的な問題はないとみなしている。
 慢性腎臓病が進行すると末期腎不全になる。末期腎不全の患者は、腎臓が健康な人の一五%未満しか働かず、体から老廃物や余分な水分を排泄できなくなり、生命が維持できず、通常数週間以内に死に至る。そのため透析や腎臓移植による治療が必要となる。とくに日本は脳死移植の提供が極端に少ないので、移植を登録しても透析を続けざるをえないのが実情だ。ただし、多くの末期腎不全の患者・・・