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社会・文化

アジアで華咲く「ウイスキー文化」

日本の後追う「銘酒」が各地に

2020年2月号


 アジアで飲まれる酒といえば、圧倒的にビールの印象が強い。日本酒や韓国のマッコリ、中国の白酒、紹興酒など食と密接に結びつき、文化的背景のある地場の酒は決して多くはないからだ。だが、アジアの途上国が高度成長し、購買力が向上するとともに食の洋風化が進み、アジアの酒は変貌を遂げつつある。転換を象徴するのがウイスキーだ。輸入酒ではワイン、ブランデーが圧倒的に多かった中国で、この数年、前年比三〇%前後の勢いでウイスキー需要が伸びている。ウイスキーの持つ熟成が生み出す奥深さと蒸留所ごとに異なる発酵・蒸留のプロセスが生む味の違いを読み解ける酒飲みが厚みを増してきたとすれば、アジアの発展の方向もこれから微妙に変わっていくかもしれない。
 ウイスキーの「新世界」の代表となった日本。ニッカウヰスキーの「余市」「竹鶴」、サントリーの「山崎」「響」など、世界に知られる銘柄は原酒不足から販売中止になる銘柄が続出、二次流通市場では価格が高騰している。最大の要因は「中国人の買い漁り」と、多くの業界人は見る。もちろん値上がり期待の投機も一部にはあるが、ウイスキー好きの中国人が増えたのは間違いない・・・