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Book Reviewing Globe 482

「台湾有事」日本が戦う意思

2024年7月号

「台湾有事は、日本有事であり、したがって日米同盟有事である」
 2021年に安倍晋三元首相が台湾を訪れた際、吐いた言葉である。まさに至言というべきなのだが、この「有事」とはどういう事態なのか。通常、台湾有事は中国の台湾上陸作戦をイメージし、それに対処するといった発想で語られることが多い。しかし、それでは台湾有事のほんの一端を語ったことにしかならない。中国の目標は、台湾の「強制的併合(coercive annexation)」であり、その方法やアプローチは多様である。
 したがって、中国に対する抑止力を維持、強化するにしてもそれらの多様な脅威を念頭に置き、多面的かつ重層的な抑止力構築を行わなければならない。
 トランプ政権の国家安全保障担当副補佐官だったマット・ポッティンジャーが編集したこの本は、そうした複雑系の脅威に対していかに台湾を難攻不落の「金城湯池」にするか、を描いた戦略論である。
 中国の台湾攻撃は、台湾海峡をめぐる戦闘にとどまらない。それは、北朝鮮の敵対的攻勢、マラッカ海峡の航行の途絶、ロシアの日本近海での挑発や欧州への威圧、そしてイラ・・・

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