三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

日本が進む科学「衰退国」への道

「巨額科研費」をただ浪費するのみ

2017年12月号

 猫の目のように変わる政権の成長戦略のうち、「科学技術立国を目指す」というのは、最も万人受けするものだ。安倍晋三首相も科学技術振興に力を入れることをアピールし、今年四月には今後三年で科学技術予算を九千億円増額させると大風呂敷を広げた。
 一方で研究者からは「予算が足りない」「このままでは基礎研究が危ない」という声が続く。
「研究者の訴えは間違ってはいないが、実は予算を無駄遣いしているのも彼らだ。しかも誰もがその事実から目を背けている」
 都内国立機関に勤める四十代の研究者はこう指摘する。無能な研究者が限られた予算を浪費した結果、しわ寄せを基礎研究が被る―。国の安直な政策により生じた、研究現場のタブーに斬り込む。

引用されない無価値な論文

 実用化が期待される先端的な研究に多くの予算を投じなければならないことに議論の余地はない。今で言えば、iPS細胞による再生医療の早期実用化や、電気自動車社会を担う新しい蓄電池の開発には巨費を投入すべきだろう。
 一方で、多くの科学者が訴・・・