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西風 528

「維新の万博」吉村の焦り

2025年5月号

 大阪・関西万博が開幕した。158の国と地域が、テーマとなる「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現するべく、大阪市の人工島「夢洲」に集った。開幕前日の4月12日、会場内で行われた開会式で、開催自治体トップとしてあいさつしたのは大阪府の吉村洋文知事。「万博史上初となる海上万博」の実現に全力を尽くしたこと、誘致の時代から数えて10年間準備をしてきたことに触れた。万感の思いがにじむ文言と裏腹に、表情はどことなく硬かった。
 海外パビリオンの建設遅れに、会場整備費用の高騰。350億円を要した木造の「大屋根リング」への批判を含め、否定的な報道が先行したせいもあってか、万博の機運は盛り上がりを欠く。前売り入場券の販売は、目標の1400万枚には届かなかった。誘致を主導した日本維新の会の存在から「維新の万博」とも呼ばれる今回。成否は閉幕後の党の運命を左右しかねない。維新代表でもある吉村氏は、失敗は許されないと必死に旗を振るが、振れば振るほど万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)との温度差が浮き彫りとなっている。
 吉村氏は万博の準備に絡み、首相官邸を2回訪れている。最初は岸田・・・

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