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米露「名ばかり停戦」への密約

「北方領土化」するウクライナ4州

2025年5月号

「ウクライナ停戦」を公約に掲げるトランプ米政権が、ロシアに有利な仲裁案を提示し、合意が得られなければ、仲介をやめると警告した。
「最終提案」と称する仲裁案は、米国がロシアのクリミア半島領有を公式に承認し、東・南部4州の実効支配も認める。ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を排除して対露制裁も解除するのに対し、ウクライナへの安全提供は曖昧にしか言及していない。誰が見ても、「ロシアに著しく有利な内容」(米紙『ニューヨーク・タイムズ』)となった。
 ウクライナのゼレンスキー大統領が「クリミアはウクライナ領であり、現時点で受け入れは困難」と反発すると、トランプ大統領は「戦争を長引かせている」と非難した。ロシアは無人機による民間施設攻撃という戦争犯罪を繰り返しており、ウクライナは一段と苦境に立たされた。
 今回の仲裁案は、交渉難航にしびれを切らした米側が「最後通告」に出た形だが、停戦の行方は不透明だ。ウクライナ属国化の野心を捨てないプーチン大統領は、一定の停戦期間を経て戦力を立て直し、再侵攻する可能性が強い。
 プーチンとトランプには、大国間取引を・・・

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