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「EU解体」を策謀する米国右派

トランプ思想「欧州輸出」が加速

2025年8月号

 欧州連合(EU)を解体し、「欧州国家共同体(European Community of Nations=ECN)」へと改称―米トランプ政権に近い保守派のシナリオに、西欧が危機感を強めている。EU懐疑論は左右の急進勢力の看板政策だが、トランプ政権が欧州の「極右ネットワーク」のリーダーシップを取り、加速を目指す。米保守派はEU解体のその先に、欧州の「分断統治」による弱体化を見据えているという。
「グレート・リセット」と名付けられたシナリオは二つある。「原点回帰」と銘打った穏健シナリオは、まずEUの行政機関で「エリートの巣窟」とみなされる欧州委員会の権限を弱める。EU法は加盟国の主権を超えない範囲に限定され、欧州議会の立法機能は剥奪し、諮問機関に位置付ける。代わりに各国首脳で構成する欧州理事会に全ての決定権を持たせる。
 一方、もう一つの「新たな始まり」というシナリオは現在のEUを解体し、2~3年の移行期間を設けて、新たな枠組みを構築する。現行の規制は撤廃し、移民や労働などテーマごとに各国は「離脱」が可能。特に妊娠中絶や同性婚など「家族、公の秩序、道徳、教育」に関しては・・・

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