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経済

《クローズ・アップ》下妻 博(住友金属工業会長・関西経済連合会会長)

「関西財界」見捨てて合併を推進

2011年3月号

 新日本製鐵と住友金属工業の合併が決まった。独占禁止法が壁になっていた合併が実現したのは、新日鐵の三村明夫会長と住金の下妻博会長という二人の実力会長の存在が大きい。とりわけ事実上、吸収される住金側の社内の抵抗を抑えることができたのは下妻会長の豪腕のなせる業といってよい。
 下妻会長本人の印象は豪腕とはかなり異なる。もの柔らかな語り口で、人の話にも真剣に耳を傾ける。北海道旭川市の医者の家庭に生まれ、十人兄弟の末っ子。中学、高校で野球に打ち込み、東京大学ではアイスホッケー部で活躍したというスポーツマン。東大で入学したのも文学部で、新日鐵で幅を利かす法学部ではない。
 住金では営業畑でならした。鉄鋼で後発の住金は鋼材の大口ユーザーである自動車メーカーには入り込めていなかったが、下妻氏が営業の最前線でトヨタ自動車、マツダなどへの納入の突破口を開いた。和歌山製鉄所勤務では労務対策も経験、組合との腹を割った付き合いがその後も現場の人に長く慕われるきっかけとなった。
 ただ、そうしたキャリアや雰囲気は住友グループの中核会社として、にらみを利かせてきた日向方斉氏など歴代ト・・・