かねてから違和感があった。パリの旅行ガイドを開くと、ほぼ間違いなく、三つ星レストランが紹介されている。東京・銀座の寿司屋や一流料亭に等しい高級店に、旅行者が訪れるのだろうか？
　ワイン界で、三つ星レストランにあたるのがボルドーの一級格付けシャトーだ。愛好家の終着点と言うべきその銘酒が、手の届かない存在になろうとしている。二〇一〇年は、前年に続いて優良な作柄となり、一本十万円を超すのは確実だ。人気シャトーのワインは、瓶詰め前に予約するプリムールという仕組みで、収穫から半年足らずの四月に先物販売される。一級シャトーの〇九年のプリムール価格は十万円の大台に乗ったが、一〇年はそれを上回ると、大半の輸入業者が見ている。最大の理由がパーカー・ポイントだ。
　米国の評論家ロバート・パーカーが、プリムールの試飲でつけるポイントは、売り出し価格を左右する。パーカーは一〇、〇九、〇五年を「私のキャリアで試飲した三つの最も偉大なヴィンテージ」と評価。マルゴーを除く一級の四シャトー、オーゾンヌ、ペトリュスなど計十シャトーに、百点の潜在力を予想する高得点をつけた。パーカー・ポイントに・・・