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代替わり進む中国軍指導層

強硬派「太子党」が台頭

2011年7月号

 胡錦濤体制から習近平体制へ。来年秋の中国共産党第十八回党大会へ向けて、中国指導部人事に目立った動きが出てきた。習近平国家副主席が、周辺を自分と同じ太子党で固めていることである。その筆頭が保守派長老・薄一波の息子、薄煕来・重慶市党委書記だ。
 だが太子党化は政治局人事に限らない。人民解放軍の太子党化も見落とせない現象だ。「太子党軍人」が、習体制を守る紅衛兵として次々に党中央軍事委員会入りを狙うポストに昇進しているのだ。それにともなって拡張主義的な太子党軍人の主張が中国の外交戦略にも色濃く反映されてきた。

「脱トウ小平」の軍拡思想


 今年に入って、中国軍の高官が対米外交の前面に出る場面が三回も続いた。「党が銃を指揮する」という中国共産党の原則にはそぐわないことだ。かつては陳毅のように退役軍人が外交部長になったことはあるが、現役軍人が外交舞台に登場した例はほとんどない。発言力を増す中国軍部の動向に、米国側も神経を尖らせている。
 最初は五月、ワシントンで開かれた米中戦略・経済対話・・・