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社会・文化

「風評被害」に泣くクラシック音楽界

有力演奏家の「来日拒否」相次ぐ

2011年8月号

 三月十一日に起こった東日本大震災が戦後最大の国難だとすれば、日本のクラシック音楽業界は今、「戦後最大の危機」に直面している。震災が直接の原因ではない。福島第一原子力発電所の事故による風評が、かつてないほどの損害をもたらしているのだ。  ここに一つの報告書がある。国の原子力損害賠償法に基づく補償を審査する、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が七月に発表した専門委員調査報告書だ。この中で今回の原発事故がサービス業に与えた損害の一つに「コンサート事業の風評被害」が挙げられており、「原子力災害を理由として(外国人)アーティストが来日・出演拒否したことにより公演が中止に追い込まれる事例が多数」と記されている。  調査を委託された日本クラシック音楽事業協会のまとめによると、三月十一日から六月二十三日までの約三カ月間に、原発事故によって中止・延期、内容の変更を余儀なくされた公演は計六百八十七件で、損失事業費は概算で四十五億三千四百万円に上る。これは日本のクラシックコンサートの年間チケット売上額(約二百五十億円)の二〇%弱に相当する。ただごとではないことがわかるだろう。

「経営破綻は時間の問題」

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