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国連「機能不全」が招く混沌

中露が歩調合わせて「形骸化」促進

2011年11月号

紹介するのも面映い気がする。国連憲章は機能の心臓部とも言うべき安全保障理事会の任務を、「国際連合の迅速かつ有効な行動を確保するために、国際連合加盟国は、国際の平和および安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせるものとし、かつ、安全保障理事会がこの責任に基く義務を果すに当って加盟国に代って行動することに同意する」(第二十四条)と定めている。「迅速かつ有効な行動を確保する」は冷戦時から死語になっている。  シリア政府による三月以降の反政府デモ弾圧で殺害された市民らが計三千人に上っている(国連人権高等弁務官事務所十月十四日発表)にもかかわらず、市民への武力行使を非難する議長声明を出すまでに三カ月もの長期を要し、さらに遠回しに制裁をほのめかした非難決議案はその二カ月後の十月四日に開かれた国連安保理事会であっさり否決されてしまった。五常任理事国のうち中国とロシアの二カ国が拒否権を行使したのである。  両国の言い分は、制裁措置でバッシャール・アサド政権を追い詰めるとより大きな被害が発生するから、「あくまでも話し合いで」に尽きる。十月二十日に殺害されたムアマル・カダフィが率い・・・