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連載

追想 バテレンの世紀 連載68

イエズス会の保護
渡辺 京二

2011年11月号

 

 一六〇三年二月、家康は伏見城でロドリゲスと村山等安アントニオと会い、長崎代官寺沢広高を罷免して、等安ら五人の長崎在住商人に同地の統治を委ねる旨を告げた。寺沢のもとで何かと円滑を欠いたマカオ貿易を、キリシタン商人の長崎自治によって促進しようとしたのである。家康はロドリゲスにも長崎統治に関与するように求めた。

 これはイエズス会の地位を高からしめるものだったが、長崎の政治と貿易に深く関わることによって、こののちロドリゲスは様々な紛争に巻きこまれることになる。

 ヴァリニャーノはロドリゲスが上京する直前、一六〇三年一月一五日に、第三次巡察の任を終えて日本を去ったが、イエズス会が政治と貿易に巻きこまれ、他修道会から非難攻撃される現状、さらにはイエズス会内部のスペイン人とポルトガル人の対立など、心痛の種は尽きなかった。彼がマカオで栄光の生涯を終えたのは、一六〇六年一月二〇日のことである。

 翌一六〇四年、ロドリゲスが家康のもとに正月の祝いに罷り出ると、家康はイエズス会に三五〇タエル(一・・・