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社会・文化

「江戸学」への招待

現代日本文化の源流を訪ねる

2012年1月号

 現代日本に脈々と通じる文化、伝統を生み出した「江戸時代」への再評価を受け、近年、歴史研究の一分野として、「江戸学」という学問分野への関心が高まりを見せている。東京の街を歩いていると、多くのグループが江戸時代の史跡散策をしている姿を目にする機会も増えた気がする。テレビなどでも東京の街を歩く番組が多く企画され、民間のカルチャーセンターをはじめとして、大学や自治体で開講されている生涯学習の講座でも「街歩き」は人気だ。こうした街歩きを通じて、江戸時代の「痕跡」を訪ねる動きも「江戸学」の重要な一要素であり、あまたの素人歴史家を輩出しながら「江戸学」は年々その裾野を広げている。

庶民に楽しみが少なかった

「江戸学」の大家、三田村鳶魚は、「大江戸の春」という論考の中で、「江戸の正月は、あまりおもしろいものじゃなかった。今日の方がよほどましだ、と私どもは思っております」(『三田村鳶魚全集』)と書いている。  武家の方は元旦から総登城というものがあり、元日は一般の大名、二日は国主大名、三日は国主大名の嫡子と決まっていて儀式で忙しい。しかし町方は、大晦日が遅くまで忙しい・・・