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経済

ユーロ危機を弄ぶヘッジファンド

「死に体」ギリシャでぼろ儲け

2012年2月号

「まったく、ドイツ人はズルい。弾丸一発撃たないで、二度の世界大戦を経ても手に入れられなかった全欧州の支配権を手に入れかけているんだから。戦争の代わりに、ギリシャ危機や通貨ユーロを武器に、十七カ国を脅して支配下に置くんだからね」  ある大物ファンドマネジャーが、最近筆者に語った言葉だ。この人物はユダヤ系で、親族が大戦前からナチスドイツの迫害を受けた経験があるため、元来ドイツへの見方は辛い。だが、言われてみれば確かに、この機に乗じて各国の予算編成権まで押さえ込んだという、今回のユーロ危機を受けての一連の「改革」は、推進するドイツにとって有利な変革であることは間違いない。そしてこの瀕死の状況下で、このドイツの思惑を見抜き、暴利をむさぼり続ける米系ヘッジファンドの暗躍ぶりに、ユーロ体制は揺さぶられ続けている。

ユーロ体制は「生かさず殺さず」

 同氏の示唆で米中央情報局(CIA)の代理人とも噂されるワシントンにある大手シンクタンクのマル秘リポートを読んでみた。ごくかいつまんで欧州に対する分析をまとめると以下のようになる。 「世界の政治、経済システムは、短期間・・・