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経済

《クローズ・アップ》植木義晴(日本航空次期社長)

再上場」を託された 初のパイロット出身社長

2012年2月号

「パイロットが社長になってもいい」。京セラ名誉会長の稲盛和夫氏は、日本航空(JAL)の会長になった直後、周囲にこう語ったとされる。その「予言」を現実にするかのように、一月十七日、JALは植木義晴専務執行役員の社長昇格を発表した。二月の臨時株主総会で正式に就任となる。

 航空大学校を卒業後、JALに入社。三十五年間、パイロットとして操縦桿を握ってきた。発表当日の会見で植木氏は、「過去の経営はよく知らないし、振り返ることもない。稲盛会長に教えてもらったことがすべてで、それが私の力になる」と語った。

 外部から来た稲盛氏が「航空の素人」を自称するのはともかく、会社幹部が「過去は知らない」というのはいかにも不自然で、植木氏を知るベテランパイロットも、「まるで稲盛会長の腹話術のようだった」と吐き捨てた。「御巣鷹(墜落事故)がトラウマになっている」などと放言した稲盛会長の考えと共通する、というのだ。

 もっとも、植木氏の温厚な人柄を悪く言う人は少ない。経営破綻後、年配のパイロットが肩たたきされた際は、会社を去らざるを得ない同期の再就・・・