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WORLD

「インド式」民主主義に限界顕わ

「信頼できる大国」は夢のまた夢

2012年3月号

「世界最大の民主国家」といわれるインドに近年、日本や米国が熱い視線を注いできた。不気味な軍事的台頭ぶりをみせる中国への政治的な牽制や、人口十二億人もの巨大市場に新たなビジネスチャンスを見出そうとする財界の期待が背景にあるのだが、この国の「民主主義」は、相変わらずの矛盾に満ちている。二月に実施された地方選挙を見ると、インドがまだまだ信頼できる大国にはなりえない事情がよく分かる。

中央の政策を州が聞き入れない

 今回、パンジャブ州など五州の州議会選挙(結果発表は三月六日)が実施されたが、最も注目されたのは北部のウッタルプラデシュ州だ。略してUPと呼ばれるこの州は、デリー首都圏に隣接しながら、州の大半に電力や水が供給されず、全国(三十五州・連邦直轄地)で三番目に貧しい州だ。しかし、日本やブラジルの人口をしのぐ国内最多の約二億人が住み、UP選挙は、二年後の総選挙の前哨戦と位置付けられた。  連邦議会の与党は、建国の父マハトマ・ガンジーや初代首相ネールの系譜を継ぐ国民会議派だが、UPでは過去二十二年間、会議派が政権を取ったことがない。インド政界の最高・・・