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政治

民主党の「成長戦略」が 国を滅ぼす

有能な人材の海外流出に「拍車」

2012年3月号

看板ばかり増やし、中身を考えない。形だけ作ったら、後の面倒はみない。これが、民主党政権二年半の「政治主導」の実態だ。その悪弊は、一人の有能な頭脳を日本から流出させ、数少ない日本の成長戦略に致命傷を与えた。内閣官房「医療イノベーション推進室」の室長だった中村祐輔・東京大学教授の退任劇のことだ。  二〇一一年一月に、当時の仙谷由人官房長官の肝いりで推進室が発足してから一年も経ずして、中村は十二月二十八日付で依願退職となった。しかも、推進室から去るだけでなく、東大からシカゴ大学に本拠を移してしまうのだ。  中村は、世界で年五%以上の成長を続ける抗癌剤市場の中でも特に競争が熾烈な「個別化医療」と「癌治療ワクチン」に関する研究開発の世界的権威である。その拠点がまるごと日本から米国に移ることの影響は計り知れない。

国家戦略より自己防衛

 個別化医療とは、個人の遺伝情報や癌細胞の特徴に合わせ、抗癌剤の投与法を調整することだ。副作用を防ぎ、医療費の節約効果も大きい。世界的抗癌剤メーカーのロシュ(本社・スイス)が個別化医療に特化する方針を示すなど、多く・・・