三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

AIJを呑み込んだ「租税回避地」

「何でもあり」の島々の実態

2012年4月号

AIJ投資顧問が二千億円もの年金基金の大半を消失した事件で、ケイマン諸島や英領ヴァージン諸島などタックスヘイブン(租税回避地)の役割が再び注目を集めている。租税回避地については、金融犯罪の温床としてG20でも「規制強化」が合意されたはずだ。だが、英米の金融関係者によると、英国と米国こそが世界の租税回避地網の中心であり、両国金融機関のマネーゲームを助けているという実態が浮かび上がる。  AIJ事件について、ある英金融筋に聞くと、「ケイマンやバミューダという名前で金融犯罪を連想するのは短絡だ。今の金融取引の大半はタックスヘイブンを経由する。カリブ海の島々は隠蔽の場所を提供するかもしれないが、犯罪自体はその投資家のものだ」と答えた。

悪いのは島々ではない

   タックスヘイブンには決まった定義がない。無税か低税率により、租税回避地となることに加え、顧客の秘密保持、透明性欠如という特徴もある。非居住者・企業に便宜を図る点では、日本でのイメージは「オフショア金融センター」が近い。この問題を研究するロナン・パラン英バーミンガム大学教授の二〇一〇年の推計で・・・