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連載

西風 371

どこかの独裁国家に似てきた?
八木亜夫

2012年4月号

「卒業式当日、教頭が全教員を遠目で確認したところ、三名の口が動いていなかった」「うち一名は歌っていなかったと認めた」
 大阪府立和泉高校(岸和田市)の中原徹校長が、「ご注進」とばかりに橋下徹大阪市長に送ったメールの文面である。

 三月二日の同校の卒業式では、国歌斉唱時、教頭が生徒そっちのけで教員の口元を見つめ、歌っているかをチェックしていたのだ。

 大阪府では昨年六月、橋下氏率いる大阪維新の会が提案した国歌起立条例が成立。府教委はこれに基づいて今年一月、全教職員約一万三千人に卒業式での起立斉唱を求める職務命令を出していた。口元チェックは、この命令を「斉唱」まで厳密に解釈した中原氏が教頭に指示したものだ。

 府立高校長が大阪市長にメールを送るというのも妙な話だが、中原氏は、橋下氏とは大学時代からの友人。メールを受け取った橋下氏は「ここまで徹底していかなければなりません」と中原氏を絶賛し、自らの返信文とともに府市の幹部や教育委員に転送した。

 だが、はっきり目に見える不起立と違い、歌わないだけ・・・