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経済

日本悩ます新興国の「ガス買い漁り」

空前の高騰で貿易赤字に拍車

2012年4月号

 東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に、日本の貿易収支は三十一年ぶりに赤字に転落した。この貿易赤字の主因は、原子力発電に代替する火力発電の増強による原油と天然ガスの輸入増であることは今さら言うまでもない。二〇一一年の液化天然ガス(LNG)輸入が年間七千八百五十三万トンと過去最高を更新し、輸入額が約五兆円にもなった。  だが、もう一つの注目されていない要因がある。プロパン、ブタンといった液化石油ガス(LPガス)の暴騰だ。一二年二月の価格は、プロパン(家庭用、業務用)が一トン当たり一千十ドル、ブタン(工業用、自動車用)は一千四十ドルとついに史上最高値を記録し、エネルギー専門家とLPガス業界を驚愕させた。最新の三月積みの価格はプロパンが一千二百三十ドル、ブタンは一千百八十ドルとさらに最高値を更新し、追いうちをかけているのだ。  一千ドル超えという価格水準は、北海ブレント原油価格が一二年三月時点で一バレル百二十ドルで推移している状況下のことで、〇八年七月に原油価格が史上最高値の一バレル百四十七・二七ドルを記録した時にも起こらなかった「異常事態」である。本来は、原油生産に随伴する・・・