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連載

不運の名選手たち28

斉藤和巳(プロ野球選手)「あの日」から時が止まったエース 
中村計

2012年4月号

 軽くウエーブのかかった栗色に染まった髪。オレンジの蛍光色のトレーニングシューズ。そして、ギリシャ彫刻を思わせるような精悍な顔立ちと、身長百九十二センチの圧倒的な肉体。

 リハビリ組を中心とした三軍練習場の中にあって、その存在感だけは明らかに異質だった。

 リハビリ担当コーチ。だが、それが現在の肩書である。
 感情をコントロールすることが血肉化しているようだった。
「個人的には、何も感情は湧かなかった。そこでよかったと思えるようなら、ユニホームを脱いだ方がいい。競争の世界ですから」

 昨年、所属する福岡ソフトバンクホークスが日本一になったときの感想だ。ともすれば、エゴイスティックとも捉えられかねないセリフだが、斉藤和巳は、感情を笑顔で封じ込めるようにし、実に落ち着いた口調でそう語った。

 精神の波をつくらないこと―。それを学んだのは、足かけ五年にもおよぶリハビリ生活だった。

 松坂大輔でも、ダルビッシュ有でもまだなかった、二〇〇三年から〇六年の四年間、「日本・・・