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経済

会長人事を壟断した東電

「情報操作」で改革の排除に成功

2012年5月号

 結局、「ババ抜き」のババを引いたのは、経営者としての実績がない一弁護士だった。政府は東京電力の勝俣恒久会長の後任に、原子力損害賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長を充てる人事を決定。混乱に混乱を重ねた東電会長人事に、ようやくケリがついた。  東電新会長は新生東電の象徴であり、東電改革の旗印となるはずだったが、今回の人事をそう捉える関係者は皆無に近い。関係者の間では下河辺新会長就任を、「万策尽きた政府の苦渋の決断」と見る向きは多いが、その背後で蠢いた東電による「強力なネガティブキャンペーンの成果」と見抜いている者は少ない。やはり東電は、「まな板の上の鯉」などでは決してなかったのだ。

ひそかに望んだ「勝俣続投」

 勝俣会長の後任探しは、福島第一原子力発電所事故が起き、国の支援なしでは東電が立ち行かないことが明らかになった段階から実質的にスタートしていた。当初、勝俣会長は福島第一原発事故の収束を節目に退任する意向を匂わせており、二〇一一年末から今年一月にかけてが「リミット」とされていたためだ。  会長候補として真っ先に白羽の矢が立ったのが、・・・