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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》高齢者医療

この「亡国の穀潰し」

2012年5月号

 危機的な国家財政状況の下、財政再建を見据えた消費増税論議が政局を二分している。国家財政の健全化を掲げながら消費税増税に突き進む野田佳彦首相は、高齢者激増の到来を強調しながら、医療や年金、福祉の社会保障制度を維持するために消費税増税が必要と訴えている。

 確かに、世界に例を見ない少子高齢者激増の影響で、「社会保障費」の増大は避けられないのは事実だ。とはいえ、その一方では目を覆うばかりの膨大な「無駄」が蔓延っている高齢者医療の「現実」を批判的に指摘する声は極めてまれだ。死期が迫った患者への無駄な延命治療によって、莫大な医療費が嵩み、若年層への経済的負担を増大させているのは言うまでもない。そればかりか、医療機関収容者が高齢者の受診などで占められることで若年層の医療機会が奪われるという目に見えない深刻な「しわ寄せ」も顕在化している。

 受給と負担のバランスが完全に崩れた医療制度の下で、高齢患者側の過剰な期待と、国庫負担を良しとして顧みない医療機関側の強欲とが相まって、高齢者医療費の膨張に全く歯止めがきかないのが実態だ。

人口動態が示す恐怖の「近未来図」

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