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経済

東電幹部人事の驚くべき「お手盛り」

反転攻勢に向けた「布石」

2012年6月号

 幹部人事にこれほど「強烈な意思」が込められた例は、今までなかっただろう。五月上旬、東京電力は次期会長に原子力損害賠償支援機構の下河邉和彦運営委員長、次期社長に廣瀬直己常務を充てる人事を発表した直後、一連の幹部人事を明らかにした。巷の注目は錚々たる顔ぶれの社外取締役人事に集中。そのほかの役員人事は社外取締役の陰に隠れたが、この隠れた「執行役人事」こそが東電の真の布陣にほかならない。そこには東電最大の実力者、勝俣恒久会長の意を汲む各分野のエースが名を連ねているのだ。

「露骨なくらい最強の布陣」

 東電が今回発表した社外取締役人事は、NHK経営委員長を先日辞任した數土文夫氏をはじめ、豪華絢爛の顔ぶれとなった。十一人の取締役のうち実に七人が東電社外の人間が就くことになり、メディアの多くは「新生東電誕生への布陣」と色めき立った。  だが、忘れてならないのは、東電がこれから委員会設置会社に移行するという点だ。委員会設置会社は、いわゆる普通の企業の形態である監査役設置会社とは異なる。普通の企業であれば取締役会が経営の中枢を担うが、委員会設置会社は経営の・・・