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経済

原子力技術者の流出深刻

日本の「虎の子」がまた海外へ

2012年7月号

 六月二十一日、懸案だったリトアニアにおける総額四千億円に達する原子力発電所建設受注に日立製作所が成功した。日立・東芝・三菱重工業の日本連合は、すでにベトナムの二基の原子力発電所建設受注を獲得しており、二〇〇九年のアラブ首長国連邦(UAE)アブダビにおける「屈辱」を見事に晴らしたかに見える。  福島第一原子力発電所事故以来、新聞、テレビをはじめとした大手メディアを先頭に国民世論は脱原発一色だ。しかし一方で、日本は、原子力発電の新規運転・保守・管理のノウハウを蓄積してきた数少ない国だ。原子力発電所の企画・設計・製造から運転・保守・点検までを一貫して行うことができるのは東芝、日立、三菱重工という日本企業だけであり、昨今の国際原発商戦での健闘こそ、日本の優位性を証明している。  しかし、状況はにわかに変わろうとしている。原因は福島第一原発事故ではない。「さらに深刻」ともいえる危機が日本の原子力産業に迫っているのだ。原発の運転ノウハウを持つ原子力技術者の海外流出だ。

年収提示額は破格の六千万円

「日本の『虎の子』ともいえる原子力発電に関する運・・・