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政治

《政界スキャン》

政治家こそ読書せよ

2012年9月号

 ハマコーが愛称の浜田幸一元衆議院議員が八月五日、八十三歳で死去した。「政界の暴れん坊」の異名があったが、だれもが記憶しているのは米ラスベガスでのカジノ賭博事件である。

 一九八〇年四月、浜田はこの事件の責任をとって大平正芳首相に議員辞職の決意を伝え、離党届を提出した。浜田と師弟の関係にあった大平は涙ながらに受け入れ、
「とにかく浪人の間に一所懸命に勉強してくれよ。読書だけは怠るなよ」
 といって手を握ったという。大平はその二カ月後に急死した。大平の言葉で注目すべきは「読書」である。議員を辞めようとしている武闘派の男に読書をすすめる。この時、浜田はすでに五十一歳だった。あのころ、政界は血なまぐさい対立、抗争続きの一方で、先輩と後輩の間に濃い交流があった。しかも、「読書」がやりとりのなかに入ってくる。いまはまずそんな場面はない。



 リーダー論の傑作といわれるリチャード・ニクソン元米大統領の著書『指導者とは』には、
〈私が知遇をえた指導書にほぼ共通している事実は、彼等が偉大な読書家だったこと・・・