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経済

《企業研究》NTT

凋落に歯止めがかからない

2012年9月号

 今年六月、NTTは五年ぶりにグループ体制を一新させた。
 米グーグルやアップル、アマゾンといったIT業界の巨人が台頭し、かつてITの旗手だったNTTの存在感はいま、急速にしぼみつつある。それどころか、近年の携帯電話やスマートフォンなどの無線通信のみならず、「スカイプ」や「LINE」などIP技術を駆使した新サービスが次々と登場する中で、「固定電話不要論」まで浮上する昨今、NTTはその存立が危ぶまれる未来がつきつけられている。

 そうした大きな時代の流れに呑み込まれる危機感を募らせるNTT新体制は、グローバル化に舵を切り、なんとか国内に閉じた通信事業からの脱皮を図ろうと、顧客のシステム構築などを主業務とする「ITゼネコン」への大胆な変貌を模索している。しかし、連結二十二万人の従業員と、国内に張り巡らした世界最大規模の光ファイバー回線網という膨大な「負の遺産」を抱えて、その動きはいかにも鈍い。

 それどころか、足元では業界他社の脅威となってきた盤石のグループ経営にも明らかな綻びが見え始めている。まさに「内憂外患」を抱えながらの産み・・・