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領土問題は米国が埋め込んだ「氷塊」

五百旗頭 真(熊本県立大学理事長・ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長)

2012年10月号

 ――日本周辺の領土問題が火を噴いています。
 五百旗頭
 日本の領土問題には、米国ルーズベルト大統領の戦後構想を起源とするものがある。第二次大戦後の新世界秩序をにらんだ大統領は、ソ連と中国を大国と位置付け、敵国日本の犠牲において、千島をソ連に、沖縄を中国に与えようとした。蒋介石が辞退したのに対し、スターリンは千島を要求し、北方領土問題は戦後史において日ソ間の溶けない氷塊となった。東アジアにおいて、ある一国ないし複数国が結託して米国を排除するという事態は、米国にとり最も憂慮すべきものである。アジアの主要国が適度に争いながら、米国に支援を求めてくる状況が米国にとって悪くない。

 ――米国が埋めた氷塊を永遠に抱き続けなければならないのでしょうか。
 五百旗頭
 この氷塊を溶かすのは容易ではないが、国際環境は大きく動いた。かつて冷戦終結でソ連が崩壊した際、中国その他との間で幾つもの領土紛争を解決したが、いずれも中間線で痛み分けとした。平和的な沖縄返還は例外だ。第二次大戦後、戦争により領土を取り戻すことが困難になった今、これ以外・・・