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経済

《企業研究 》新日鐵住金

遅きに失した合併

2012年10月号

「後出しじゃんけん」―。市場ではこんな批判も燻る。

 新日本製鐵と住友金属工業が合併して、十月一日に船出した新日鐵住金。その両当事者企業が合併直前の八月末になって急遽、表沙汰にしたのが、今上期(四~九月)決算での計二千四百億円にものぼる固定資産の巨額減損処理だ。対象となったのは、新日鐵が広畑製鉄所(兵庫県)と堺製鉄所(大阪府)。住金が台湾・中国鋼鉄などとの共同出資による高炉運営会社「東アジア連合鋼鐵」傘下の住金鋼鉄和歌山。いずれも「リーマンショック後から三期連続赤字に陥るなど資産の収益性が低下、投資回収が見込めなくなった」(旧新日鐵財務部)というのが理由だ。

 だが、ある大手機関投資家はこうした説明に不信感を募らせる。「それでいくと、つまり前期末時点か、少なくとも今三月期の1Q(四~六月)末時点ではすでに減損の必要性を認識していた、とも受け取れる。なのになぜ、七月末発表の1Q決算では減損処理をせずに、そのわずか一カ月後にがらりと掌を返すような真似をするのか。これじゃ詐欺的と言われても仕方のない行為だ」というわけだ。

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