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連載

続・不養生のすすめ23

「栄養不足」で縮む平均寿命
柴田 博

2012年11月号

先般、日本人の二〇一一年の平均寿命が発表された。男性の平均寿命は、前年より〇・一一歳低下し、世界で四位だったのが八位にまで転落した。女性は前年より〇・四歳低下し一九八五年以来保ってきた世界一の座を香港に明け渡すにいたった。香港を一つの国とみることの是非はここでは問わない。女性の平均寿命が香港を下回るにいたった要因の一つには東日本大震災の死亡者の影響もある。しかし、厚生労働省の試算により、震災による死亡者を加えなくとも、香港に及ばないことが明らかにされている。最大の原因は、低栄養に関係する二十歳代の女性の自殺の増加だ。

 これで女性は二年連続、男性も一〇年から一一年にかけて平均寿命が低下したことになり、楽観的なわが国の学者も、「たまたまでしょう」などといっていられない事態になった。筆者は五年前、拙書『ここがおかしい 日本人の栄養の常識』(技術評論社刊)の中で今日の事態が起こることに警告を発している。日本人の年代別の食品・栄養摂取が公表されるようになったのは一九九五年の国民栄養調査からである。それ以前は、すべての年代の平均値しかわからなかったのである。
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