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WORLD

膨張する東南アジア華人経済

各国で対立の火種に

2013年1月号

 華人と華僑は似ているが定義は異なる。前者は滞在国の国籍を有し、後者は中国籍のまま外国で暮らす人間で、両者を合わせると全世界で四千万から五千万人いるとされる。人数にはばらつきがあるものの、どのようなリポート、推計でも一致しているのは、全世界の華僑、華人の八割が東南アジアに集中しているということだ。  中国は近年、中東や遠くアフリカにまで触手を伸ばすようになっているが、多くの場合出稼ぎだ。そして中国からの投資が増えている東南アジアにも、「第二の華僑」と呼ぶべき大陸からの出稼ぎ労働者が大挙して押し寄せている。  東南アジアでは、現地に帰化しているケースが多く、華人と呼ぶのが正確だ。国によって数や国民に占める割合は異なるが、多くの国で華人は経済のメーンプレーヤーであり続けてきたことはご存じの通りだ。  ここにきて、華人経済がこれまで以上に膨張し、各国の火種になっている。

対中国取引に介在する

 二〇一〇年一月一日に東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の自由貿易協定(FTA)が発効してから三年が経過する。各国の対中貿易や中国からの直接・・・