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社会・文化

「猪瀬都政」逆風下の船出

立ちはだかる官僚と議会

2013年1月号

「副知事を務めていたとはいえ、実は政治手腕は未知数。これから都政を動かしていけるのか」  都庁幹部の一人は、新知事の猪瀬直樹についてこう疑問を呈した。  十二月十六日の都知事選挙で四百三十万票を超える史上最多得票で当選した猪瀬は、肩書を知事に変えて再び都庁に戻った。  前知事石原慎太郎の後継指名を受け、これだけの民意に後押しされた猪瀬都政だが、その先行きは決して順風ではない。都庁と議会という都政運営の両輪が、猪瀬の前に立ちはだかる。

猪瀬を認めぬ都庁官僚

「現在の幹部職員は石原に認められた人物ばかりで固まっている。しかし多くは、面従腹背だった。新知事は事実上のゼロからのスタート」  都庁の中堅幹部はこう指摘する。猪瀬には副知事としての六年のキャリアがある。石原の側で学んだ都政運営のノウハウくらい身につけていそうだ。それがなぜ、ゼロからなのか。  石原が週に二、三日しか登庁しなかったことは有名な事実だ。政策の是非はともかく、それで十三年間都政が回っていたのは、石原には側近がいたからだ。右腕と呼ばれ、恐怖支配で都庁職員を震え上がらせ・・・