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政治

「国土強靭化」のまやかし

莫大な税金が「選挙対策」に消える

2013年2月号

 道路や橋の安全のために組まれた予算を、政治家は様々な口実をつけて流用した。安全を大義名分にすれば、補修、改修以外の項目にもお金が流れたからだ。補修より新設に予算が振り向けられる構図は変わらず、「建設の時代から維持・管理の時代」への掛け声はむなしく終わった――。  米国で二〇〇〇年代に入って相次いだ道路や橋の崩落の問題点を暴いた『TOO BIG TO FALL』(Barry B. LePatner著、二〇一〇年刊行)は、地味でも不可欠な点検・補修より、票目当ての派手な工事を好む政治家が、社会資本を蝕む様子を描いた。それは、東日本大震災で浮かび上がった国土の脆弱さの克服を大義名分として公共事業を拡大する、安倍政権の「国土強靭化」政策に対する警鐘のようにも見える。

太田と古屋の利権誘導合戦

 自民党は今通常国会に国土強靭化基本法案など三法案を議員立法で提出する。二〇一二年六月に同党が提出し、審議未了で廃案となったものだ。当時の内容は、最初の三年間を集中期間として十五兆円を投入するとしていた。「十年間で二百兆円」という数字を掲げ、「ばらまきの復活・・・