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連載

日本の科学アラカルト30

「伝える」「見る」「送る」生活を変える電波技術研究

2013年2月号

 二月十九日、米国ワシントンでチャールズ・スターク・ドレイパー賞の授賞式が行われる。工学分野におけるノーベル賞と言われる同賞を、今回日本人が初受賞した。金沢工業大学名誉教授の奥村善久氏は、現在の携帯電話に繋がる研究が評価されて全米技術アカデミーにより選出された。

 奥村氏は旧電信電話公社(現NTT)に所属していた一九六〇年代に、早くも移動通信に関する技術研究を始めた。「奥村カーブ」と呼ばれる電波が遠方に届く際の伝わり方を示した曲線は、この分野の人間であれば、イロハのイとして学ぶ。これが電電公社による世界初の商用携帯電話の開業に繋がり、奥村氏の研究成果は基地局設置を計算する上で重要な役割を果たして、世界標準となった。八九年に始まった歴史の浅いドレイパー賞だが、過去には集積回路(IC)やパソコンの開発者が並んでいることからみても、どれだけ画期的でしかも生活に資する開発に贈られるものかわかるだろう。

「電波」に関する研究もまた、日本の科学・技術分野における「お家芸」のひとつといえる。世界的にも「Yagi Antenna」として広く知られる、テレビ放・・・