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「独裁君主」を待望する中東

「アラブの春」二周年の現実

2013年3月号

 民衆蜂起という形による「革命の成就」から二周年。そろそろ新体制の政治も軌道に乗る頃かと思いきや、革命の先鞭をつけたチュニジアをはじめエジプト、そしてイエメンでも、聞こえてくるのは「デモ」「暴動」「衝突」のニュースばかり。本格的な内戦に発展して百万単位の難民問題を引き起こしているシリアは言うに及ばず、米軍の撤退したイラクでの宗派間対立が火を吹くのは必至の様相で、混迷は深まる一方だ。 「アラブの春」は何処へ行ってしまったのか? この問いかけは、「春」という不適切な単語が当てられたことで答えのないクイズになってしまった。起きていることは歴史的、かつ真に人間的な理由に基づく「大災害」だというのに、風流な名称をつけた欧米識者の罪は、それこそ根雪のように深い。  そもそもアラブ世界には湿潤な温帯に属するごく一部の地域を除いて、「春」と呼べるようなうららかな好季節はない。あるのは、穏やかで過ごしやすかった冬が終わって天候が急変し、雷鳴と共に巨大な雹が降ったり、あらゆる交通を止めてしまうほどの大砂嵐である。この短い「嵐の季節」が過ぎれば、どこまでも暑く、いつ終わるとも知れぬ長い夏が来るの・・・