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連載

Book Reviewing Globe 346 

通貨戦争の眼目はドルと金

2013年3月号

Currency Wars The Making of the Next Global Crisis James Rickards

 アベノミクスが世界の為替切り下げ競争を引き起こすのではないかとの懸念の声が新興国を中心に聞かれる。

 日本政府は二月中旬にモスクワで開かれたG20では、円安誘導批判をかろうじて抑え込んだが、戦いはまだ始まったばかりである。

 それは、二〇〇八年九月のリーマンショック後の米連邦準備制度理事会(FRB)のQE(量的緩和)から始まった。その後一一年六月までバーナンキFRB議長はドル札を刷れるだけ刷り、空からヘリでそれをまき散らすように流動性をぶち込み、その結果ドル安を誘発し、輸出を後押しした。・ヘリコプター・ベン”の面目躍如といったところだった。

 米国はそのおかげで一九三〇年代の大恐慌の再来を防ぐことができた。しかし、それは世界規模の通貨戦争を引き起こした。

 ウォール街の投資プロの著者は、現在進んでいる通貨戦争は過去百年で三回目だと言う・・・