三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

マツダに急接近するトヨタ

技術開発の地盤沈下が深刻に

2013年3月号

 二〇一三年の年明け以降、自動車業界では一つの「噂」が流れている。トヨタ自動車がマツダへ出資するのではないか―というものだ。  一二年十一月、マツダは一五年からメキシコ新工場でトヨタブランドの北米向け小型車を生産する提携を結んだ。このOEM(相手先ブランドによる生産)車にはマツダの虎の子である超低燃費エンジン技術「スカイアクティブ」が搭載される。マツダが同技術を他社へ供給するのは初めてとあって注目を集めるのは当然だが、冒頭の噂は「今回の提携が両社の資本提携にまで発展するのではないか」(全国紙自動車業界担当記者)との見方に端を発している。そして、その背景にはトヨタが抱える技術開発の「アキレス腱」が存在する。

資本提携で「技術流出」に縛り

「トヨタがマツダを傘下に収める理由など何もない。単に好調な北米市場の需要に対応するためにマツダの現地生産力を借りるだけだ」と、トヨタ関係者はマツダへの「出資疑惑」を真正面から否定する。だが、同業他社の間では、今回の提携が単なる「生産委託」とは受け取ってはいない。「そもそもトヨタは北米で十分な生産能力があり、わ・・・